製本作業工程における技術力には、2パターンがあります。一つは機械加工におけるオペレーション力です。このオペレーション力は、操作マニュアルに則った機械調整し、素材にあった操作を的確に行い加工することができる能力です。二つ目は、多種多様な素材の条件に合わせて、瞬時にしてその加工方法を導き出して、いとも簡単に加工してしまう能力、すなわち体験を繰り返すことで積み上げてきた能力というものがあります。これはいわゆる匠の技とか職人芸と称される能力で、一朝一夕で習得するのは難しく、経験を蓄積することで積み上がってくるものです。
今回、『製本を科学する』プロジェクトにおいて、接着剤を紐解くにあたって、この経験的な積み上げ価値というものが一番影響しているのがエマルジョン型接着剤であると考えます。気候や天候の変化に合わせて水分量を調整したり、各種の接着剤を調合することで、素材に最適な接着性能を作り出して加工する。私たちはこの職人的な各社の核となるであろう技術力を、定量的に『見える化』すること、いいかえれば標準化することの意義を、紙媒体への新たな価値創造であったり、技術の伝承への貢献であったり、あるいは無用なトラブル回避への抑止力となると考え、切り込めるところまで切り込んでみたいと考えました。
内容における不備や不足があるかとおもいますが、ここに上程させていただきます。今後も新たな素材の出現や環境変化によって内容を更新する必要が出ると思います。是非皆様のご意見を伺いつつ、ブラッシュアップさせていきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
2014年2月
東京都製本工業組合・製本+シナジー創造特別委員会
委員長 田中真文
製本を科学する実行委員 井上正
今回ご協力いただきました下記メーカー各社に対し深謝申し上げます。
なお、本稿の記載事項に関しての誤謬は全て東京都製本工業組合の責めに帰するものであり、調査先関係各位の責任を負うものではありません。
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