印刷の世界は、ハード面(たとえば活字)に限って言えば、明治以後一世紀にわたって、資産を増やし続けてきました。それは膨大なものです。しかしコンピュータの出現がこの財産を無用の物にしてしまいました。時は仕事のあり方の改革を要請しました。そして今日があります。コンピュータの導入が、従来の工程を省略可能にし、ひとりで出来る仕事に変えてしまいました。その影響を受けて、出版、印刷、製本が三位一体といわれた以前のような独自な仕事の分業の域が薄れていきました。もちろん、いまもその分野の仕事を、専門職として、大事にしているところもあります。しかし今日では、これらすべてを一社で賄なってしまうのも珍しくありません。そういう現状を容認しながら、敢えて、各組合を紹介します。

情報の電子化ということで業界の境の垣根が低くなるなか、その傾向をものともせず、いまもその独自路線を突っ走っている組合です。シール、ラベル、ステッカーなど普段何気なく目にしたり、気づかずに、貼ったり剥がしたりしているものを作っています。子供の遊びシールもあれば、実用のコーヒーやジュースの缶類に貼られたシール。汗をかくとずれおちてしますビール瓶のラベル。電車の窓の優先席の告知シールや携帯電話の警告シール。注意してみると、小さいながら、いたるところに使われています。生活をする上で欠かせないものです。
ニーズの高級化と共に媒体の変化、技術の改革も要求されます。かつて紙であったものがいまはビニールへ。ビニールも貼るものとの違和感を出さないために色ものから透明なものへと変わってきています。用途も従来は物の上に貼るのが当たり前だったのが、印刷の上に糊をつけ、内側からでも自然に見えるようにとニーズはどんどんエスカレートしてきます。車のフロントガラスに貼られたステッカーはそうです。これを見ただけで糊とインクの葛藤が想像されます。又電車の開閉ドアのガラスに貼られた両面印刷シールもあります。片面は商業用、もう片面は降乗に関する注意書き。見るだけだとなんでもないようですが、そこにもさまざまな試行錯誤の取組みがあります。


生活に密着すればするほど大きな変化を見つけ出すことは難しいと思います。この組合の制作物も生活に密着する分、また派手な部分が少ないため、技術変革への挑戦や苦労は見えてこないのが本当かと思います。しかし今後も技術向上も含め生活に必要なものをしっかり作り続けていきたいと思っています。